「ネクロプシー」の疑義照会について厚生労働省医政局医事課死因究明等企画調査室の回答を2020年8月13日、日本病理学会が報告した。
ネクロプシーは、病理針組織病理診断、針剖検、死語超音波ガイド下生検などのこと。死後の病理解剖によって病因の解明を病理において行うが、遺族の同意を必ずしも得られず、剖検をできないケースがある。全身の解剖ではなく、針を使った組織生検では同意を得られることもあり、病因解明において重要性を増している。
日本病理学会では、ネクロプシーについて厚生労働省医政局医事課死因究明等企画調査室に疑義照会を実施。2020年8月11日に回答を得たとして報告している。
一つは、ネクロプシーは解剖に当たるかという点について、「ネクロプシーはご遺体から検体を採取する観点から『死体解剖の類』であり『死体解剖保存法』の下で行うべき『解剖』の手技に相当するか?」と疑義照会をしている。
それに対して、厚生労働省は、「解剖とは、解剖学、病理学、法医学等の研究、教育等のための手段として死体の内部を観察することをいうものであると解されています。したがって、医学的な目的で死体に対して行われる行為であっても、体液の採取等死体の内部組織を露出させるという方法によらず、また、内部の組織の観察を目的としない行為は解剖とはみなされません」と回答している。
もう一つは、ネクロプシーを遺族の同意を得て行う時に、死体損壊罪などの罪に問われることがあるかという点について、「ネクロプシーで死体損壊罪などの罪に問われることはあるか?あるいは死体損壊罪に問われないためにはどのような手続きが必要か?」と疑義照会。
厚生労働省は、「死体から体液の採取等死体の内部組織を採取する場合については、『医学的な教育研究のために死体から体液の採取等死体の内部組織を採取することのみを目的とする場合は、その目的及び方法が医学的に妥当なものであれば正当業務行為とされるであろうが、この場合も遺族の承諾は必要であり、その手続は、ほぼ死体解剖保存法に準じて行われることとなろう。』と解されています。よって、ネクロプシーについても、遺族の承諾を得て、医学的に妥当な方法で行われる限度において、正当業務行為として、死体損壊罪の違法性は阻却されると考えられます」と回答している。
ネクロプシーの重要性が増す中で、法的な位置づけを明確にすることで、実施しやすくなるものと考えられる。