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long COVID(ロング・コビッド)が角膜の神経線維と樹状細胞に関連 トルコなどの国際的な研究グループが報告

 新型コロナウイルス感染症の後遺症(long COVID)、特に嗅覚・味覚障害や頭痛などの神経性の症状がある人では、角膜の神経線維の減少と樹状細胞の増加が見られると分かった。long COVIDを識別する指標になるかもしれない。

 トルコ、ネジメッティン・エルバカン大学を中心とする国際的な研究グループが、眼科の専門誌『British Journal of Ophthalmology』で7月に発表した。

角膜共焦点顕微鏡検査を利用 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかった人の少なくとも10人に1人で、回復から1カ月以上経過しても様々な症状が続く後遺症が見られることが明らかになりつつある。

 後遺症は神経性および筋骨格系の症状が多いこともあり、小径神経線維の損傷による影響が示唆されている。

 このたび研究グループは、レーザー光源の角膜共焦点顕微鏡を用いた画像検査(CCM)を用いて、1〜6カ月前にCOVID-19と確定診断された40人(感染時の重篤度は軽症から重症まで様々)と、罹患していない健康な30人の角膜神経線維損傷を非侵襲的に評価した。

 CCMは、糖尿病性神経障害や線維筋痛症などに起因する神経損傷や炎症の評価に利用され、角膜の高解像度生体スキャンにより、副基底神経線維や免疫反応を担う樹状細胞の密度を客観的に数値化できる。

 40人には、英国国立医療技術評価機構(NICE)が作成したlong COVID評価質問票(全身、呼吸器系、神経系など9領域の症状を調べるもの)に答えてもらい、後遺症の程度をスコア化した(0〜28点)。

 感染から4週後で55%、12週後で45%に、神経性の症状が見られた。

 long COVIDのスコアと神経線維の損失が相関

 こうして判明したのは、COVID-19から回復して1か月後に神経性の症状がある人は、感染しなかった人に比べて、角膜神経線維の損傷・損失が大きく、樹状細胞の数が多かったということ。神経性症状がない人は、角膜神経線維の数は感染しなかった人と同程度であったが、樹状細胞の数は多かった。質問票によるlong COVIDのスコアは、角膜神経線維の損失と強く相関した。

 本研究は観察研究であり、参加者数が少なく、神経性症状の判定に客観的な尺度ではなく質問票に基づいた等の制約はあるものの、COVID-19から回復後も症状が続く人で角膜神経の損失と樹状細胞の増加を示した初の研究と研究グループは指摘。

 long COVIDの患者が、同症状の重篤度と神経性/筋骨格系の症状に関連する小径神経線維の損傷を有することは明らかであるとして、角膜共焦点顕微鏡検査はlong COVIDの患者を迅速かつ客観的に評価するための臨床ツールになる可能性があると結論している。

www.bmj.com

新型コロナウイルス感染症

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