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難聴に対応した新しいデバイス、ACS Nano 誌で報告

 電池を使わずに難聴を治療できる導電性の膜が開発された。このデバイスは耳の中に埋め込まれると、外部電力を必要とせずに音波を一致する電気信号に変換することができる 。
 中国研究グループが米国化学会発行のACS Nano誌で報告した。

難聴治療デバイスのための材料探し

 難聴は、生まれつきの人もいれば、加齢や感染症、長期間の騒音にさらされることで発症する人もいる。多くの場合、脳が電気パルスを音として認識できるようにする内耳の蝸牛にある小さな毛が損傷している。内耳の有毛細胞が機能しなくなると、そのダメージを回復させる方法はない。

 現在は、補聴器や人工内耳による治療が行われている、これらの機器は外部電源を必要とする。

 このほかに健康な蝸牛の毛を再現し、雑音を脳で処理される電気信号に変換して、音を認識できるようにする方法が考えられている。これまでの研究では、音波の圧力で圧縮されると電荷を帯びる「圧電材料」や、音波で動くと摩擦が生じて静電気が発生する「摩擦帯電材料」などの自己発電を試みられてきた。しかし、このデバイスは簡単に作ることができず、人間の音声に関わる周波数にわたって十分な信号を生成することができなかった。

 Yunming Wang氏らの研究チームは幅広い音声周波数にわたって高い効率と感度を持つ音響検知デバイスのために、圧縮と摩擦の両方を利用する材料を簡単に作製する方法の開発に着手した。

 二酸化ケイ素でコーティングされたチタン酸バリウムのナノ粒子を導電性ポリマーに混ぜ、乾燥させて薄くて柔軟なフィルムを作成した。次に、二酸化ケイ素の殻をアルカリ性の溶液で除去した。すると、ナノ粒子の周りに空間のあるスポンジ状の膜が残り、音波を当てるとナノ粒子が揺れるようになった。

 実験では、ナノ粒子とポリマーが接触することで、膜の電気出力が原始的なポリマーに比べて55%増加することが示された。さらに、この膜を2枚の薄い金属グリッドで挟んだところ、170ヘルツという大人の声の範囲内の周波数で、音響センサーの電気信号が最大となった。最後に、研究者チームはこのデバイスを耳の型に埋め込み、音楽ファイルを再生してみた。 

先進的な人工蝸牛への一歩

 こうして判明したのは、このデバイスで電気出力を記録して新しい音声ファイルに変換したところ、オリジナルの音声ファイルと強い類似性を示すということ。研究グループは、この自己発電装置は、ほとんどの音や声を聞くために必要な広い音響範囲に感度があると述べている。難聴に対応する新しいデバイスとして有望かもしれない。

phys.org

https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsnano.1c04242

医療機器

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